「その獣は、人間の目をしていました。」本作コピーライターの方の大好きなコピーです。福山さん演じる弁護士と、役所さん演じる殺人犯の、接見室のガラス越しの鬼気迫る心理戦が本作最大の見所です。『羊たちの沈黙』のクラリスがレクター博士に惹かれのみこまれていくように、弁護士は殺人犯に翻弄されていく（私見ですw）。獣が時折みせる“情”、役所さんの怪演は私史上NO.1です。観客は、弁護士の目線を通し“見えない真実”という闇に迷い込んでいく。息をのみ翻弄される不思議な心地よさ？ 面白さ？ が本作にはあります。ぜひ劇場で、あなたが信じたい真実、そして『三度目の殺人』の意味を確かめてください。私は是枝作品の中で一番好きです。

皆様シネマ歌舞伎をご存じですか？ 歌舞伎の名作・話題作を映画館で気軽に楽しんでいただけるシリーズです。今回紹介するNEWシネマ歌舞伎『四谷怪談』は28作目です！『四谷怪談』は夫の伊右衛門に、残酷に殺されたお岩が幽霊になり復讐をする怪談噺として有名です。しかし、本作で描かれるのは恨みを募らせたお岩の怖さではなく、伊右衛門やその周りの人間達が自分の力ではどうにもならないことに思い悩む姿。どうしてよいかわからないまま行動する伊右衛門の心の弱さや欲は「江戸時代も今も変わらぬ人間の本質なのだ……」とブルブル震えながら感じさせられます。現代にも通じる人間の怖さを描いた『四谷怪談』。ぜひ、映画館でご覧ください！